2年前に書いた駄文の続編的な駄文です。以前に私は、ボカロ図書館もボカロミュージアムも国立国会図書館を使えば実現できるのではないかという妄想を書きました。私は今でもこれが最適解だと考えていますし、この妄想の持つ大きな可能性を信じています。

今日、私はふと思い立ったので、2年前にもやったNDL-OPACで「初音ミク」というワードで検索(視聴覚資料のみに限定)をしてみました。やはり、2年も経つと所蔵されている「初音ミク」資料数は大幅に増えていました。しかし、どれもこれも商業流通しているものばかりで、同人流通しているものはヒットしませんでした。2年前から状況はまったく好転していなかったということです。

本来であれば、納本制度により同人サークル側でNDLに納本して頂くのがベストですが、2年も経ってこうも状況が変わっていないのであれば、別の観点から保存を考えていく必要があります。今回メインテーマとして扱うのは「寄贈」という手段です。

0.国立国会図書館 (National Diet Library ; NDL) と納本制度
NDLについて触れるのであれば、一応さわりだけでも説明する必要があるかと思われます。国立国会図書館とは、言ってしまえば日本最大の図書館です。日本国内で出版された全ての出版物を収集・保存することを使命とし、東京本館だけで約2500万点の出版物を所蔵しています(2011年3月末時点)。

納本制度によって、全ての出版者が出版物をNDLに対して納本することが義務となっており、書籍から雑誌、DVDやらCDなどの電子出版物、果ては小冊子に至るまで、とにかくあらゆるものを収集します。上で出版社ではなく出版者と書いたのは、法人・団体のみならず個人が出版したものに対しても、納本義務が課されるからです。「義務なのは書店に置いてある自費出版本だけじゃないの?」と思われるのは大きな間違いで、即売会などで頒布される同人音楽CDから、みんな大好きなエロい薄い本まで、本来は納本義務のある出版物なのです。

なお、ただで国立国会図書館に出版物を渡せと言うことではありません。NDLに事前に問い合わせをした上で納本すれば、小売価格・送料の5割までを代償金としてもらえることになっています。他国の納本制度では無償での納本が当たり前であることから、これは特筆しておいてもいいでしょう。

ちなみに、本来であれば納本義務を怠っている出版物には、小売価格の5倍を上限として科料が科されることとなっていますが、未だに適用されたケースはありません。まあ、社会現象にまでなったけいおん!が納本されていなかったケースもあるようで(現在では納本済み)、納本制度を周知させるのはなかなか難しいようです。

1.納本された出版物はどのように利用されるのか
国立国会図書館から納本された出版物は、図書館員の手によってデジタルな目録として整理され、NDL-OPACとしてインターネット上に公開されます。これで、インターネット上から資料の有無が検索できるようになります。

また、出版物は閉架式の書庫に保管され、利用者の要求に応じてNDL館内で閲覧できるようになります。著作権法の規定により、著作物の半分までであれば、コピーをお願いすることもできます(視聴覚資料はおそらくコピー不可)。コピーは、NDL館内だけでなく、NDLに登録された利用者の要求に応じて、日本全国にコピーを郵送してもらうこともできます。また、近所の公共図書館に申請すれば、実物を貸し出してもらうこともできます(視聴覚資料は不可。複写・館外持出も不可)。

最近個人的に、資料が必要になったので10年以上前に出版された雑誌のコピーを依頼しましたが、とても綺麗な状態で保存されていました。このように、国立国会図書館は納本された出版物を永久的に保存し、後世まで文化を残していくために活動しています。

(同人誌以外はNDL館内のみの提供となってしまいますが・・・)

2.NDL内のVOCALOID系資料の現状
国立国会図書館サーチから検索して頂けると分かりますが、「初音ミク」で検索して検索結果を一通り見てみましたが(視聴覚資料のみ)、全て商業流通しているものであり、同人で頒布しているものは一切所蔵されていません。このままメジャーレーベルのCDだけが納本される状態が続くと、将来的に有名PのみがVOCALOIDの歴史として語り継がれ、これまでVOCALOID文化を支えてきた数多くのPや絵師が、歴史の海の藻屑として消え去ってしまうのではないかと危惧しています。

今はまだニコニコ動画やYouTubeなどに作品が残っている状態だからいいですが、それらの作品はいつ消えてしまうか分かりません。ドワンゴやGoogleがいつ倒産・サービス終了するかも分かりません。ネット上から消えてしまえば、あとは人々の記憶から忘れ去られてしまうだけだと思います。

3.「手元でいらなくなったものを寄贈する」というアプローチ(同人誌に限る)
本来であれば、出版社である同人サークルから納本されるのが一番いいと思います。しかし、納本制度が浸透していない以上、納本制度を啓蒙していくのは大変な労力がかかりますし、今までに出版されたものに関しては、出版者の手元に残っていないものは納本したくてもできません。

そこで、ボカロ界隈で活動していらっしゃる全ての皆さんに、手元でいらなくなってしまったものだけで構いませんので、古本屋に二束三文で売り払ってしまうよりも、国立国会図書館への寄贈をお願いしようと思った次第です。「買い取り金額安すぎて、売るのもアレだけど捨てるのもなあ・・・」とお考えの方は、是非NDLへの寄贈を考えてみて頂けないでしょうか。

寄贈といっても、実際に東京・関西にあるNDLまで直接行って手続きする必要はありません。このように、郵送での寄贈を受け付けています。まずは寄贈希望の資料一覧をNDLに送付し、NDLからの返答を待って実際に寄贈資料を送付するだけです。リストの作成や送料の負担など、寄贈者には莫大な負担を負って頂くことになりますが・・・

ちなみに、同人誌の納本事例に関してですが、東方Projectやボカロ評論本 (VOCALO CRITIQUE) など、探してみると案外実績があります。VOCALOIDは一般的なエロ同人誌などと比べて権利関係がクリアですので(何よりエロいものが少ないw)、比較的スムーズに寄贈などの手続きができるものと思われます。

4.音楽CDの方はどうなるの?
一方で、VOCALOID文化のメインストリームとなる同人CDの方なんですが、国立国会図書館の方針により、開封済みCDは蔵書資料として寄贈を受け入れることができないそうです。音楽CDならワンチャンあるかと思って一応メールでも問い合わせてみたんですが、あっけなく断られてしまいましたねえ。

正直、同人誌よりも音楽資料が失われていくことを阻止していくことが喫緊の課題であると思うのですが、NDLが引き取ってくれないのでは仕方がありません。こちらに関しては、現状同人サークルなどボカロP側に細々と働きかけていくしかなさそうです。まあ、なにかいい方策があればおいおいまた書くかもしれません。

5.長々と書いたのでそろそろまとめ
今から100年後に、VOCALOID文化黎明期に作られた音楽やイラストに触れることができたら、とても素敵で素晴らしいことだと思いませんか? しかし、現状は今存在しているVOCALOIDの文化資産を欠損することなく、後世に保存していくための前提条件が整っているとは、必ずしも言いがたい状況です。

この問題で深刻なのは、無名なPや絵師であるほど、より資料が残りにくい状態になるからです。簡単に言ってしまえば、有名Pはメジャーレーベルから引く手あまたですから、メジャーデビューした時点でほぼ自動的にNDLへ作品が収集・保存されていきます。しかし、(言葉が悪くなってしまって申し訳ありませんが)無名である方は自分からNDLへ納本していかないと、将来的に自分の作品がなかったことにされてしまう可能性もあります。

ここで、楽曲制作者・同人誌・画集などを発行している絵師の皆さんに改めてお願いです。今現在で過去に発行されているVOCALOIDの同人CDや画集などが在庫として手元にございましたら(もちろんCDは未開封であることが前提になりますが)、是非国立国会図書館への納本をご検討頂けないでしょうか。なければ、これから新しく作ったものだけでも構いません。民間の出版者であれば、最低納本部数は1部からとなります。

「納本するくらいなら一人でも多くのファンの方に届けたい」という気持ちももちろん理解できます。しかし、NDLにVOCALOIDの文化資産が存在することで、長い将来にわたってあなたの作品に触れてもらうことにできるきっかけを作ることができます。せっかく皆さんが血反吐を吐いて、手間暇かけて作ってこられた作品たちです。将来的になかったことにされてしまったら悲しいじゃないですか。今までたくさんの方々が関わってきたからこそ、今のVOCALOID文化があるわけで、その方々の活動の一部始終を「無かったことにしてはいけない」と私は考えています。